日常茶飯事
 −Ver.『Jr.HighSchool 適材適所?』−



「───こう、きたか……」
 ポツリと、井沢は呟く。
 学期が変わり、始業式の翌日の、事だった。
 始業式当日を家の都合で欠席していた彼は、本日の朝練時にゆかりに言われた言葉を思い起こし、溜息を零す。
「───人が居ない隙に、コレはあんまりだよなー………」
 黒板の隅に書き連ねられている、今学期の各委員者の名前の中に、自分の名前を見つけての一言が、冒頭の一言。
「よりにもよって………」
 クラス委員長かい。
 内心でボヤく。
 今朝の様子から行くと、絶対に、間違いなく、仕掛け人は………。
「なにボーッとしてるのよ。HR始まるわよ」
 等と、後方から平然と声を掛けてきた西本ゆかり、その人に他ならないだろう。
「誰の所為だよ」
「あら、誰の所為かしらね?」
「少しは考えろよ」
「考えたわよ、十分に」
「どこが?!」
 ゆかりの返事に、思わずそう声を上げてしまう。
 はっきり言ってしまえば、そんな事をしている余裕なんて、井沢には全くないのだ。毎日毎日サッカー漬けの生活で、更にはジュニアユース代表選手としての合宿やら試合やら遠征やらで手一杯、他の事に気を回せる状態じゃない。
「だーって、こうでもしないと全く関わり持たないでしょ、井沢は」
「は?」
「学校行事、その他諸々に。正確に言えば、サッカー部以外の人間に」
「別にそんな事」
「無いって言い切れる?まあゼロって言うのは大袈裟にしても、でもゼロに近いと私なんかは思うけどー?」
 そうは言われても、と反論しようと試みたが、結局すぐにそれは諦めた。
 確かに。単純に、サッカー部に関係している人間と、それ以外の人間とで鑑みれば、9対1の割合に近いのかもしれないからだ。
「反論、出来ないでしょう?」
「───だからって、これは無謀だろう」
「まあ、そうかもね。でもま、それは承知の上の決断だし」
 彼女の言葉に、そうなんだろうなー、と井沢は胸中で呟いた。
 自分にどれだけ余裕がないかを解っていて、それでも彼女がそう仕向けたのだろう事は一目瞭然だ。
 そうでもなければ。自分の相棒に、井沢を指名したりはしないだろう。
「勇気、あるよな」
「別に私だけじゃないわよ、それは」
「何で?」
「そ〜んな状態だって知ってて、策に乗ってくれるウチのクラスも大したモノだと思うけど」
「あー……確かに」
 ゆかりの言葉に、井沢もポツリと同意する。
 まだしも2年生3学期だから良いものを。学期を間違えれば行事目白押しで、クラス全体が散々な目に合っていた事だろう。
「でもま、私は信頼してるし?」
「へ?」
「物事中途半端に投げられない井沢君を、ね」
「…………お前、最悪」
「褒め言葉として戴いておくわ。早速今日、委員会あるから、ヨロシクね」
「はー?!」
「お仕事よ、お・し・ご・と。クラス代表なんだからしっかりね」
「って、何?まさかオレ一人?」
「さあ?」
「さあって、オイコラ西本!!」
「あ、委員バッチ、先生からちゃんと貰ってね」
「そんな事より放課後の事だよ!!どーなわけ?!」
「行ってみてのお楽しみ。第2生徒会室に3時だから忘れずにね」
「そーじゃなくって!肝心な事に答えろってば!!」
「行けば判る事でしょー?」
 ゆかりがそう返した直後、始業のチャイムが鳴り響き。教室に入ってき担任に、会話が打ち切られ。井沢は半ば頭痛を覚えながら、自分の席に戻るのだった。


 直後担任に、所謂朝の挨拶の号令を命じられ。
 いきなりの事態に唖然とした彼に、クラスの面々が大爆笑をしたのは、後日談(笑)



                                    03/12/25 UP



■ってな事で。キリバン4500をふみふみして頂いたchisa様からのリクエスト。
 お題は『井沢とゆかり嬢の友情話』で、
 更にキーワードが『学級(クラス)委員の井沢君とゆかりちゃん(中学時代)』。
 何か一つでもキーワードを頂けると書きやすい、とか言って、
 無理やりキーワードを決めて頂きました(すみませんでしたchisaサマ〜……;;)
 んでもって最終的にこ〜んな話になってしまいました………。
 誰だ君達…………。
 しかし書くのは楽しかったです(笑)
 微妙にかっこ悪い感じの井沢が、でも中学生っぽいか?とかとか思ってみたり。
 ゆかり嬢の姐御肌な所とかも書くのは楽しかったです。
■こーんな謎風味なお話ですが、謹んでchisa様に捧げます!
 リクエストありがとうございました!