LOVE GAME 0.5 (プロローグ)


「スキ」という感情は難しくて───。
自分が抱く「スキ」という感情でさえ
  難しくて大変なのに、
他人が自分に抱く気持ちに気を回し、
  その上、それを理解するということは、
例えば大の苦手の教科で九十点以上をとるのと同じほど、
  いや、もしかしたらそれ以上に、俺にとっては難問だった。

けれど今は────
  多分、以前の俺よりはずっと、
それは難問じゃあ、なくなっている。
  置き換えてみればいいのだ、ただ単に。
俺に恋した人間を、俺自身に。
  そして恋された俺を、俺の想いの対象である人に。
そうすれば、嫌でも理解できる。
  叶わないことの辛ささえ、今なら分かる。

だけど。
  勿論、俺は、このままこの想いを叶わないものになんて、させない。
諦めるには早すぎるし、諦めるつもりも毛頭ない。
俺にとっての勝利の女神を手に入れる為ならば、
  どんな努力だってするし、どんなことだって出来る。

このゲーム勝負は、まだ始まったばかり、なのだ─────。






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     L O V E   G A M E
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「遅いっ」
 怒りをたっぷりと含んだその声に、俺は思わず眉をしかめた。まあ、いつもの事なんだけど、これは。
「三十分の遅刻っ。もう朝練が終わっちまう時間に来てどーすんだ仙道、てめえっ」
「んー。ごめんね越野」
「ごめんね、じゃねーんだよっ。反省してんのかお前本当にっ」
「してるけど」
「だったら、いいかげんに朝練、真面目に来やがれっ」
「来ようとは思ってるんだけど、眠気に勝てなくてさ」
「ぜんっぜん反省してねえじゃねえか、てめえっ」
 越野がそう怒鳴るのを、少し曖昧な笑みを浮かべて聞き流し、俺は後輩からボールを受け取った。
「仙道っ」
「うん、反省するからさ、練習しようよ、越野。時間勿体ないしさ」
「おーまーえーなあっ」
 そう言って顔をしかめる越野を横目に、俺は軽くドリブルを始めた。と、同時に、再び越野の怒鳴り声。
「バカッ、準備運動もしねえで怪我したらどうするんだよっ」
「大丈夫だよ、家から走って来たから」
「そういう問題かっ?!」
「ホラ、越野」
「お前は人の話、聞いてるのかっ」
 そう言いながらも、すぐさまリターンパス。
 そのパスを受けて、そのままダンクにいこうかと一瞬思ったんだけど、すぐに思い直して、やめた。この状況でそんな事をしたら、きっと越野が怒るだろうから、3Pシュートで、とどめておく。
 ボールはそのまま、ゴールに吸い込まれるように落ちていった。
「ったく、てめえは……。監督がいないからって、好き勝手やりやがってっ」
「いないから、出来るんだよ」
「………好きに言ってろっ」
 越野はそう言って、クルリと背中を見せて後輩からボールを受け取ると、練習に戻って行ってしまう。
 それを見ながら、俺は思わず笑ってしまう。
 越野に怒られるのは、嫌いじゃない。別に俺がマゾってわけじゃなくって、ただ純粋に、越野の怒っている顔が綺麗だから、なんだけど。
 勿論、それ以外だって十分彼は綺麗で可愛いし、いつだって俺を魅きつけてやまない。
 でも、俺に向かって怒っている時、その時だけは、少なくとも越野は俺の事を気にしてくれている、って事だから。
 だからついついいつも、余計な一言で、俺は越野を怒らせてしまうのかもしれない。
 さて、とりあえずは、越野の機嫌を直してもらおうかな。
 そう考えると俺は、越野の後ろ姿を追いかけた。


                                    0.5 END
                                      03/01/XX UP


■てな事で。
  非常に姑息な手段での作品UPです(爆)
  以前発行したコピー本より転用。
  でももう在庫もないので、丁度いいかと(笑)
■続き物です。ってタイトル見れば一目瞭然(笑)
  この話、出したはいいが実は未完です(死)
  このいい加減っさっぷり、いかにも弱小サークルですね……(-_-;
  でも折角書いてた話だし、HPも開設したし、で。
  ここに日の目を見せてやりました。
  んで、サイト内での完結を目指します。
  頑張るぞー。(本当か?)