SugerSugerWhiteday


「困った……」
 難しい顔をしながら、越野はそう呟いた。
 もう何日も前から抱えていたその問題の解決策は、結局肝心要の当日になっても一向に浮かんでは来てくれなくて。
 今朝から越野の頭の中では、その一言だけがグルグルと回っていた。
 何が一番問題かって……。
 越野は一体何度目になるのかすら分からない、その問題点を胸中で再び呟く。
「どうやって、奴の目を盗んで行動するか、だよな」
 事が事だけに。
 だってどう考えたって言えないじゃないか。
 そう思いながら、越野は天を振り仰ぐ。と、真っ青な空の色が、窓越しに視界の中へと飛び込んできた。
 今日もいい天気だなあ。
 考え込んでいる事を一瞬忘れ、越野はボンヤリそう思う。
 天気は快晴。
 まさに人によっては願ったり叶ったりの上天気。そう、雨なんかよりは、ずっと今日この日に相応しい。
 1ヶ月前のその日よりはずっと質素だけれど、それでも確かに校内中が何となく落ち着かない。

 そんな本日は…ホワイトデイ。


「こーしのっ」
 4時間目が終わり昼休みに入った教室に、ひょっこりと特徴のある髪型と、これまた特徴のある声を伴って。毎度の如く現れた仙道に、今日ばかりは内心で小さな溜息を零す。
「学食、行こうぜ。……越野?」
「今行く」
 呼びかけにそう答え、越野は立ち上がる。
 こう四六時中一緒じゃあ、判らない様になんて無理に決まってる。そりゃあ覚悟はして
いたけど。
 こうして改めて状況を認識してみると、本当に自分達は四六時中一緒に過ごしている。クラスは違うけれど、それはもう見事なまでに。授業中は流石に無理だけど、授業間の短い休憩時間でさえ下手をすれば一緒に過ごしている。
 勿論それが嫌なわけでは全くないけれど。それどころか正直に言えば嬉しい事だったりするのだけれど。
 それでも。
 ……今日に限って言えば、厄介だ。
 だって、どう考えても言えないじゃないか。
 たとえちゃんと理由があるにせよ。
 ホワイトデイのお返しを渡したい娘がいます、なんて。


「越野ー?今日、何か変じゃない?」
「そうか?」
「そうだよ。何か、心ここにあらずって感じ」
「気のせいだろ。それよりお前、何回も言わせるなよ。人参食え、人参。ガキじゃねえんだから」
「そうは言っても嫌いな物は嫌いなんだから、仕方ないと思わない?」
「思わない。大体お前、この間は食ってたじゃないか」
「そりゃあ越野が作ってくれたヤツ、残すわけないじゃん。それにアレは美味かったよ」
「アレもコレも同じ人参なんだから食えるだろッ」
「違うって。味付け全然違うもん」
「食ってもないのに言うな!」
「……食べたけど?一口」
「へ?」
「見てただろ、越野」
「そ、そうだっけ」
 そう答える越野の目の前に、仙道は件の人参を突き出した。
「ほら」
 確かに。差し出された人参には齧った跡が、ある。
「……やっぱり心ここにあらず、じゃない。何かあった?」
「別にない」
「本当にー?」
「本当に」
「嘘っぽいなー」
「お前に言われたかないわッ」
「あ、ヒドイ言い草」
 そう言いながら苦笑する仙道に向かって、内心で『ごめん』と呟く。
 心あらず、だってそれは本当だから。
 変な誤解をさせたくないし、たとえ理由があるにせよ所謂『お返し』なんて物を仙道以外に渡すのを見せたくない、のだ。
 大体にして。
 のほほんとした雰囲気とは裏腹に。仙道彰という人間は、はっきり言って人一倍嫉妬深い性質なので。
 理由があるとしたって、多分、絶対、良い顔をしないのは目に見えている。
 本当にオレってこいつに愛されてるのか?
 そんな風に思うのは、こんな時。
 どんな事があったって結局越野が深く深く想っているのは目の前にいる彼ただ一人なのに。その事実しかないのに。
 信じて貰えてないのかな。
 信じられない気持ちが大きいのは絶対オレの方なのに。
 とにもかくにも。
 何とかして仙道に気付かれないようにして、鞄の中にコッソリ入れてある掌サイズの『お返し』を渡さなければならないのだ。


「……ごめん越野」
「へ?」
 放課後教室に現れた仙道のその第一声に、越野は何とも間の抜けた一声を零しながら彼を見上げる。
「職員室に呼び出しくらった」
「……何しでかしたんだお前」
「………山浜ちゃんの授業で居眠り5回目」
「バカ?」
「うわあ酷い」
「だって山浜センセは絶対見逃してくれねえの判ってるだろ?知ってるだろ?」
「……うん」
「それでも5回目の居眠りってんだからバカ以外にどう言えっての。ま、覚悟決めてお説教聞いてくるんだな」
 そう言って笑ってやると、仙道もいささか情けない苦笑を浮かべ、もいっちゃんには言っておいてと言い残し、職員室の方へと消えて行く。
 そんな後ろ姿を見送って。それから越野は大急ぎで体育館へと向かう。
 いつもの通りなら、きっと彼女はもう体育館に来てる筈だから。仙道ファンの友達の付き添いで。
 体育館に着くと案の定、彼女は居た。彼女がこっちに気付く前に、仙道ファンの友達の方が先に越野に気がつく。
「あれー越野ー?仙道君は??」
「山浜センセの授業で居眠り5回目記録して現在職員室で待機中」
「えー?!とうとう5回目?!」
「そう。流石に自分の失態にしょげてた」
「山浜センセのお説教じゃあ確実に30分は遅刻かなあ」
「そうね……30分で済めばいいけど」
 親友の言葉に彼女はそう答え苦笑している。
「あーじゃあ依深(えみ)、場所とっておいてくれない?私差し入れに何か飲み物買ってくる。んで、来たら早々に渡して印象付けなきゃねー」
「お前、これ以上印象付けてどうすんの?純粋にバスケ選手としての仙道ファンだって断言するような他に例のないファン、流石にあいつでも忘れないぜ?現に珍しく顔と名前一致してるくらいだし」
「いいじゃん別にー。大物選手になった時でも平気で顔パスさせて貰えるようなファンになるんだから私はッ」
「……ある意味不純」
「いいのよッ!安心して、越野の分もちゃんと買ってきて上げるから。私は陵南バスケ部のファンでもあるから心が広いのよ」
「んだそりゃ」
「じゃあ依深、お願いね」
「うん」
 そう言い残し去って行く扶紗江を見送り、二人は思わず顔を見合わせて苦笑した。
「ごめんね、越野君、騒がしくしちゃって」
「や、いいんだ。それで、さ。場所取してなきゃならないのは分かってるんだけど、ちょっと良いかな?」
「……私?」
「うん」
 頷く越野に彼女は不思議そうに小首を傾げつつ、それでも小さく頷いた。


「お疲れー」
「お疲れ様でーす」
 本日も長く厳しい練習時間を終え、部員達は口々にそう言って部室へと引き上げていく。
「越野さん、ボールここで良いですか?」
「ああサンキュ」
 後輩の言葉にそう返し、越野はそのままボールを一つ手にした。
「無理すんなよ?」
 植草の言葉に笑って頷く。
「分かってる」
 その言葉に植草も頷いて、それから部室へと引き上げて行く。
 越野の30分の居残りは既に習慣付いていて、誰も特に言う事無く引き上げていく。時には何人かが参加していくけれど、今日はそれもなさそうだ。
 それでも。
 あれ?
 越野はそう胸中で呟いた。
 自分は練習をしなくても、必ず入口付近に座り込んで越野を待っている仙道の姿が今日はない。そう言えば練習中も何だか不機嫌だった。
 不機嫌の理由に心当たりはない。まさか、と思わない事もない出来事もあるけれど、でも時間を鑑みると、どう考えても理由にはなり得ないし。そう思いながら暫く入口を眺めていたが、戻ってくる気配もない。
 ……先に帰ったのかな。
 何か気分を害する事があると時々ある事だったから。越野はそう判断し。
 帰りに寄って行こう。
 そう結論付けて、越野は気持ちを切り替えてシュートの練習に入るのだった。


 30分後。ボールを片付け床にモップを掛け終わった越野は、部室に向かう。
 明かりの消えた部室の扉を開け、電気のスイッチを手探りしようとした次の瞬間。
「うわっ」
 急に強い力で腕を引かれ、室内へと引き込まれる。
「仙道?!」
 他にこんな事をしそうな相手に心当たりは無い。咄嗟にそう声を上げたが、抵抗する間もなくその腕の中に抱き込まれる。
「ちょっ、仙道ッ」
 怒鳴る後ろでバタンと派手な音を立てて扉が閉まる。それから、ガチャリという不穏な音。
「何で鍵なんか閉めてるんだッ」
「邪魔入ったらヤだし?」
「何の邪魔だボケッ!とりあえず明かりくらい付けろ!」
「ヤダね」
「お前は嫌でも俺には要るんだよ!着替えれねえだろ」
「……急いで着替えてどうすんの?デートにでも行くんだ?」
「は?」
 唐突な仙道の一言に、越野はキョトンとして仙道を見返した。しかし明かりの無い室内では、仙道の表情はまるで掴めない。
「俺の目を盗んでまで会う大事な恋人なんだろ?」
「何の事だよ」
「あくまでしらを切り通すつもりなんだ」
 明らかに苛立ちを含んだ仙道のその言葉に、越野は瞬間押し黙る。
 まさか、その一言が顔にも出たのか、仙道が小さく笑った。
「嬉しそうに笑ってたよね、あの娘」
「ちょっと待って仙道!違うんだッ」
「何が違うの?今日この日に女の子にプレゼント渡すのに、他に何かあるんだ?」
「でも違うんだってば!」
「聞きたくないね」
「ちょッ仙道ッ!」
 暗がりの中、それでも仙道の表情をちゃんと見たくて、越野は仙道の顔を覗き込もうとした。が。
 次の瞬間、きつく抱き込まれ荒々しい口付けに動きを封じられる。
 驚愕に体を強張らせた越野をお構いなしに、仙道の舌は好き放題に越野の口腔内を犯していく。
「……っざけるなボケッ!」
 ようやく仙道を引き剥がし、酸欠にクラクラしそうな己を鼓舞すると、越野は仙道を睨みつけた。
「ふざけてるのはどっちだよ。俺って相手が居ながら、越野こそ何考えてるんだよ」
「だから違うって言ってるだろ!ちゃんと人の言う事聞けってんだ!」
「……何?お別れの言葉でもくれるんだ?」
「違う!冗談でも言うなそんな事!」
 咄嗟にそう怒鳴った瞬間、ポロリと零れ落ちた涙に、涙を零した越野本人も、そして仙道も大いに慌てた。
「こっ越野?!」
「うるさいッ」
 咄嗟にそう言い返し仙道から離れようとしたが、それよりも早く仙道の腕が再び越野を捕まえる。
 くそう何で泣いてるんだ俺ッ!内心でそう怒鳴り、それでも泣き顔を仙道の目の前で曝したくなっくって、そのまま越野は仙道の胸にぶつける様にして顔を埋めた。
「ごめん越野、泣かないでよ」
「うるせえ、誰の所為だと思ってやがる」
「ごめん……でもさ、俺のショックも解ってくれる?だって今日ってホワイトデイだよ?そんな日に越野が女の子にプレゼント渡すなんて思わないだろ」
「……何でお前知ってるんだよ」
「あ、認めるんだ渡したのは」
「………でも疚しい理由じゃ、ない……」
「ふーん?」
「仙道!」
「理由、説明してくれるつもりある?」
「……する、から」
「本当に?」
「うん」
「じゃあ俺も種明かし。説教、延期になったんだ」
「……え?」
「山浜ちゃんに急な来客とかで、時間がかかりそうだからって明日の放課後に延期。それで体育館に行ったら、越野と彼女が裏に回ってるの見えたから。悪いなーとは思ったけど気になって後を、ね」
「………つけたってか?」
「うん。でも流石に近くまでは行けなかったから遠目で窺ってたら、問題のシーン。俺のショック、解る?」
 それは解るつもりだった。逆の立場だったらと思うと堪らない。だからこそ、仙道に気付かれないように、と思っていたのだ。
「で?」
「え?」
「越野の、説明。俺にだけ言わせてだんまりを決め込むなら……ここで襲うからね」
「バッ!何考えてッ」
 言うなり忍び込んできた仙道の手に、越野は声を上げる。
「やめろバカッ説明するって言っただろッ!!」
「じゃあして。今すぐ」
「分かった!分かったからッ!だから離せよッ!ってか先に着替えさせろ風邪ひく!」
「ああ、それはマズイか。はい」
 そう言うと仙道はあっさりと手を離した。
「電気」
「付けるの?付けたら用務員のオジサンが確認に来るんじゃない?」
「付けなくても来るだろ。最終下校時間、近いし」
「……やっぱ説明逃げる気だ」
 途端に険の含まれた声で詰め寄ってきた仙道を両手で制し、越野は声を上げる。
「するって言ってんだろ!!」
「ああ。じゃあ家に寄ってくれるって事?」
 さらりとそう返され、越野は言葉に詰まる。
 何だか上手く話を持っていかれた気もするが、それでも何時までも部室に居るわけにもいかないし、落ち着いて説明できる場所が他にあるでもない、ので。
 越野は無言で頷いた。
「オッケー。じゃあさっさと着替えて帰ろうか?あ、コンビに寄ってからね」
 仙道の言葉に、再び越野は頷くのだった。


「……お礼が言いたかったんだ」
 仙道の家に辿り着き、一先ず汗を洗い流し空腹を満たした後。手渡されたコーヒーカップを両手で包み込む様にして受け取った越野は、そう切り出す。
「ああ、バレンタインの?」
「いや、確かにチョコ貰ったけど、そうじゃなくって」
 そう答えて、それから越野は隣りに座った仙道を見上げる。
「……貰ったの知ってたのか?」
「これは別につけてた訳じゃないからね言っとくけど。本当に偶然通りかかったんだ。これは本当。だから貰った経緯も解ってる」
 悪いけど受け取れない、そう答えた越野に、それでもどうしても受け取って欲しいのだと言ったその時の彼女の表情は仙道もよく覚えていた。
『新学期になったら転校で、イギリスなの。そのまま日本には戻って来ないかもしれないし、だからどうしても伝えたかったの。越野君が今そういう気になれないの、十分解ってるんだ。だから気持ちに応えて欲しいとかじゃないの。こんなのは失礼かもしれないけど、これで自分の気持ちにきりをつけたいの。それで越野君を好きで良かったって、そういう風な思い出にしたいの。伝えればよかったって後で後悔するの、嫌だから』
 そう言って微笑んだ彼女を綺麗だと思った。自分の想い人が他人から告白されているのを見たのに、そう思った。それは彼女の潔さ故に、だと思う。
 潔いまでの表情とは裏腹に、小さく震えていた両手。
 そんな状況で、越野が受け取れない筈がない。
『本当に良いんだ?』
 気持ちに応える事が出来ないけれど、そう言外に含ませた越野の問いかけに、彼女は小さく、それでもはっきりと頷いて。
『……ありがとう』
 そう言ってチョコを受け取った越野に、漸くの笑顔を浮かべて。
『私の方こそ、ありがとう、だね。ごめんね、時間取らせちゃって』
 そう告げると、その場を立ち去った。
 強い娘だな、と思った。叶えられる事のない想いに、けれど正面から向かいあって。清々しいまでの潔さに、感動さえした。
 だから仙道もその事を敢えて越野に言う事はしなかったのだ、と。仙道は素直に越野にそう告げた。
「でも、お返し渡すとなると話は別だよ」
「だから!違うってばッ」
「じゃあ何。お礼って」
「……手紙、入ってたんだ」
「チョコに?」
 コクン、と越野は頷く。
「受け取ってくれて本当にありがとう、これからも頑張って下さいって。それから、俺のプレーが大好きですって」
「……で?」
「………その字が、さ」
「字?」
「……うん。昔もらった手紙と同じ字だったから」
「昔もらった……何?ラブレター?」
「違うってば。そんなんじゃなくって、でもそれよりも俺にとっては大事な手紙、かな」
「何、それ」
 ラブレターよりも大事な手紙だなんて聞き捨てならない、と身構えた仙道に。越野は、だから違うって、と苦笑する。
「そんな色恋沙汰じゃないよ。お前じゃあるまいし」
「どういう意味、それ」
「自分で考えろ。とにかく、そんな色っぽい話じゃないよ。もっと切実」
「……何」
「………中二の時に、俺バスケ辞めようって思った時期があったんだ」
「え?!」
 予想外の言葉に。仙道は目を見開いた。
「嘘……」
「本当。怪我とスランプが重なって、メチャクチャ落ち込んで……。本当に辞める一歩手前までいった」
 そんな時にさ、貰った手紙なんだ。
 越野は小さくそう告げた。
「励ましの手紙。差し出し人の名前もない、机の中にそーっと入れられてた手紙でさ。でも凄い嬉しかった。俺のプレーなんか誰も見てくれてるわけじゃない、誰に必要とされてるわけでもない、って自暴自棄になりかけてたから余計に。ああ見ててくれる人がちゃんと居るんだなーって。俺のプレーなんかでも好きだって言ってくれる人も居るんだなーって思ったら、もう少し頑張ってみようって思えた。冗談じゃなく、あの時俺はその手紙に助けられたんだ。で、凄い手紙の主に感謝した。ありがとうって凄く言いたかった。でも、誰だか判んなくって……」
「それが、今になって判明した、と」
「そう。だからチョコとは別に、お礼が言いたかったんだ。あの時の手紙の。だってあれがなかったら今の俺は居ないんだから」
 越野がバスケを辞めていたら、そう考えた途端、仙道はゾッとした。
 そうしたら今の自分も此処にはいないのだ。
「……じゃあ俺も感謝しなきゃならないのかな」
「え?」
「だって越野がバスケ辞めてたら、俺達は出会えてなかったかもしれない」
「……それも、そうか」
 良かったのかな悪かったのかな。そう呟いた越野に、仙道は眉を吊り上げる。
「越野?!」
「嘘!冗談だよ!俺だってそんなのは嫌だよッ」
 慌てて答えた越野の言葉に、仙道は目を丸くする。
 もしかしなくても実はとんでもない言葉じゃなかろうか。
 越野も一拍遅れて己の言葉の意味に思い至ったらしく、急激に顔を真っ赤に染め上げた。
 素直に好きといってくれない越野の、ポロリと零れた本音。
「……どうしよう越野、俺すっごく嬉しい」
「知るかそんなのッ!!バッカ抱きつくな!コーヒー零れちまう!!」
「あああもう俺、あの娘に二重の意味で感謝しなきゃ!」
「しなくていい!離せ!!」
 喚く越野をそのまま抱きしめて、でも、と仙道は呟く。
「最初から説明してくれれば良かったのに」
「……だって、嫌だろ?俺が逆だったら、理由があるって解っても嫌だと思うし……」
「………何かその発言も凄い嬉しいかも」
「え?」
「嫉妬してくれるって事でしょ。逆の立場だったら」
「べっ別にそう云う事じゃッ」
「あああもう本当に!今度俺、あの娘に何かお礼しなきゃ!お陰で最高のホワイトデイだったって」
「言わなくていいそんな事!!」
「嬉しいよー越野。期せずして熱烈な告白を聞けて!」
「誰が熱烈な告白だボケッ!」
「越野がだよー。今日は眠らせないからねー」
「ばッ!何でそうなるんだ!離せバカ!!」
 覆い被さってくる仙道にそう怒鳴り上げてみるが、既に後の祭り。
 熱烈なキスと愛撫になし崩しに乱されて。
 薄れゆく理性の最後に越野が思ったのは……。

 仙道にホワイトデイのプレゼント、あったのに……。

 だった。

 そのプレゼントに仙道が大喜びをして。越野が更に自分の首を絞めたと悟るのは、また別のお話……(笑)


                                 03/03/15 UP




■『仙越企画』のV.D.&W.D.企画に参加させて頂いた駄文をUPしてみました(笑)
  とりあえずホワイトデーのお話です。
■タイトル…何故にシュガーかってえと……私的に甘々な話になったkらです(笑)
■んでもって最後の一文に、また別のお話、なんぞと書いてますが、別に続編は考えてません(笑)
  無理(笑)
■久々に仙越書けて楽しかったですー。
  いつもの如く、とっても謎なお話になってしまいましたがー(笑)