花の道

「いい天気だな」
 カミュは軽く伸びをしながらミロに笑いかけた。ミロも微笑んで頷く。でもこの二人にとって天気が雨だろうが晴れだろうが一緒にいることは何にも代え難い幸せなのだから。
 シャンゼリゼ通りは賑わっていた。かといってゴミゴミした雑踏と言うわけではなく、皆美しいこの通りを微笑みを交わしながら闊歩しているのだった。辺りには花の香りが満ちている。市が美観のために通りに植えた花。色とりどりの美しい花弁が道の両側にうずわっている。
 午前中はこの通りの一郭のカフェで二人でお茶を飲んだ。色んなお茶があってミロはただカミュに任すのみであったがカミュお奨めのガトー(お菓子)をつつきながら午後の計画を立てたり、カミュの思い出話に耳を傾けたりと実に楽しいものであった。
 不意にカミュはお茶を飲むのをやめて言った。
「ミロ、ちょっと一人で覗いてみたい店があるんだ。悪いがその時には他の所を見ていてくれ」
「いいけど…」
 何だろう?ミロは何となく不安になった。カミュのことだから古い骨董品でも誰にも邪魔されずに見て回りたいのかもしれない。ミロが上品で美しい可愛らしいインテリアを愛するのとは逆に、カミュは渋い年季の入った食器などを好むのだった。その違いもまたお互いに魅力なのだったが。
 お茶と軽い食事が済むと二人は再びシャンゼリゼ通りを歩いた。そしてカミュはミロの予想通り骨董品屋の前に立ち止まり、
「悪いけど、じゃあな」
と言って店の中に入って行った。ミロは仕方なく通りをぶらぶらすることにした。幸いミロの目を引く美しいものが沢山ある。
 花屋で立ち止まって小さな花に話しかけていると、突然、
「お兄さん」
と男の声がした。道でも聞かれるのだろうか?まずいな、この辺のことは何も分からないのに。そう思いながら振り返ると、一人のフランス人の紳士が立っている。
「あ、あの…」
 紳士はにこやかに、
「ここは初めてかな?」
「はい…」
 いきなり紳士はミロの肩を抱いて、
「私とちょっとお話しよう」
 ミロは真っ青になった。
「離してください…」
 やっとの思いで懇願するが紳士(ではなかったその男)はミロの肩をぐいぐい抱き寄せて無理矢理花屋からミロを引っ張り出した。そしてミロの顔に自分の顔を近づけた。
(カミュ…!)
 ミロは思わず目をつぶった。――突如肩が楽になった。ミロが恐る恐る目を開けると道に男がひっくり返っていてそれを睨みつけるカミュの姿があった。
「失せろ!」
 カミュが一喝すると男は飛ぶように逃げ去った。カミュはミロの肩を揺さぶると、
「大丈夫か?!」
と急き込んで尋ねる。ミロがこくりと頷くとカミュは嬉しそうに、
「良かった!」
とミロを抱き締めた。ミロの瞳に思わず涙が浮かぶ。ミロはカミュにすがって、
「カミュ…!怖かった…」
 ミロの瞳に涙が溢れているのに気づくとカミュは思わず今一度優しくミロを抱き締める。
 カミュはミロを離すとハンカチを取り出してミロの涙を拭ってやった。ミロもいつまでも泣いてはいられない。カミュはしっかりとミロの肩を抱くと、
「俺から離れるなよ」
と微笑んだ。自分が一人にした癖にとミロはクスッと笑いながらも嬉しそうに頷いた。
「さ、行こう!」
 カミュはミロの肩を抱いたまま歩き出した。ミロも合わせてついて行く。
 美しい花の香りを含んだ風が二人をそっと優しく包んでいた――。




■ナンパされてますよミロさま……。
 出来る物なら私がしたいさナンパ!!!!!!(壊れ気味)
 ってーかもう本当にゆみざき様の書かれるミロの純真な事………。
 ついでにカミュ様の格好良い事…………。
 純真で無防備で、保護欲かきたてられちゃうようミロさま!!!!!
■頂いてからUPまでにこんなに時間かかってしまってすみませんでした、ゆみざき様!!