春爛漫

 日が少しずつ長くなってきた。風も温かさを含んでいる。
 ミロは桜の木に小宇宙を注ぐのに終始していた。カミュと共に日本に桜を見に行って、その美しさに感動したのか、苗を貰って来て、聖域の隅に植えて花咲けよとばかり熱心に桜を育てていた。
 カミュは面白くなかった。ミロが桜ばかりにかまけてカミュとの付き合いもおろそかになっていた。疲れすぎて倒れてしまったミロをカミュが部屋に担ぎこんだこともあった。しかし少し元気になるとミロはすぐ庭に出て行って、せっせと桜に小宇宙を注いでやるのだった。
 半ば心配、半ば嫉妬。カミュはむっつりとミロの様子を眺めていた。
 そしてとうとう桜がそれなりの大樹となって見事な花を咲かせた。
 ミロはほっとしたのか、その場に座り込んで、疲れた様子をしながらも嬉しそうに桜を眺めていた。
 カミュが側にやって来て言った。
「咲いたな」
 カミュの不機嫌には気がつかずミロは満足そうに頷いた。そしてカミュの方を見ると、
「覚えてるか?」
と不意に訊いた。出し抜けに言われカミュは戸惑った。ミロはちょっと顔を赤らめて俯くと、
「一緒に日本で見た桜綺麗だったな。ここにもどうしても桜を植えたいと思ったんだ。二人だけの…」
 カミュは思わずミロを見た。ミロは、恥ずかしそうに、
「こんな人工的に育てたくなかった。でも一日も早く桜の花を見たかった。あの時の――」
 そう言われてカミュはやっと思い出した。桜の大樹の下でミロと一緒に桜の花を見た。
 そしてカミュは誓ったのだ。
 まったく、あんまりミロが桜ばかりを相手にしているので忘れてしまった。自分が恥ずかしい。
 カミュは部屋に行って、またミロの方へ戻ってくると、
「ほら、気付け薬」
とグラスを渡し、その中に綺麗な色のワインを注ぎ、自分のグラスにも入れた。そしてそっとミロのグラスに自分のグラスを当てると、ミロの耳にあの時の言葉をもう一度そっと囁いた。
 ミロは真っ赤になりながらも嬉しそうにグラスに口を付けた。

――ずっと一緒にいよう――




■と、いう事で。またしてもゆみざき薫様から奪いました(笑)
  お題は『花見』。春なので。そして桜の時期なので。
  無理矢理奪い倒してみました(笑)
  すみません&ありがとうございます!ゆみざき様vv
■しっかし本当にゆみざき様の書かれるミロ様ってば可愛いようーvv
  素直ですよね。純粋というか。
  ウチのミロにも見習わせたい……;;