夏に向けて

 カミュはぼんやりテラスから外を眺めていた。かぜが温かい。陽射しもう夏の様子である。木々には若葉が萌えいで、キラキラと光を反射していた。
 こうしているとミロと自分の幼い頃を思い出してしまう。

 ミロは小さな頃から美しかった。ふわふわの金髪に白い透き通るような頬。カミュに対して無邪気な微笑を見せる。カミュは絶対ミロには負けたくなくて、背丈でも強さでもいつもミロを打ち負かしていた。
 そんなあまり、ミロを泣かしてしまうこともあった。ミロはカミュに見られないように幼いながらも陰でこっそりしくしく泣いていた。そんなミロを可哀想に思いながらもカミュはミロがいとおしくてならず、かと言って慰める言葉も見つからず、ぶすっと駄々っ子のように拗ねてしまうほかなかった。
 カミュはある日、ミロに花冠を作ってやった。不器用な手で作った拙いものだったが、ミロは輝くばかりに喜んだ。頬を微かに紅潮させ、花が枯れてもいつまでもその冠を大事に頭に載せていた。
 それからカミュはミロを泣かしてしまった時など、事あるごとに花冠を作ってやった。それは季節によって色んな花で彩られていたが、この若葉が映える季節にこそ貴重で美しい冠ができるのだった。
 同時に、この季節は幼い二人の思い出を綴る最も輝かしい季節なのであった。
 やがて時は移ろい、二人が青年の域に達した今となって、ミロはあの花冠を覚えているだろうか?

「ミロ」
「どうした?」
 ミロは少年の面影を残したままの表情で微笑む。カミュはちょっといたずらっぽい目で、一番最初に冠を作った花を見せた。ミロの瞳が一瞬戸惑ったようだったがすぐに喜びの色で一杯になった。
 懐かしさと感激のあまり口も利けないミロにカミュは、
「冠作ってやるよ」
と、微笑して見せた。
 ふいにミロの瞳から涙が零れ落ちた。ミロは慌てて涙を拭うと、
「すまない…」
と、小さく謝って俯いた。
(変わらないな…)
 カミュは心の中で笑うと椅子に腰掛けて冠を作り始めた。ミロは横に座って熱心にカミュの手元を見つめている。
 あの頃と変わっていない。そして、これからも変わらないことだろう。
 
 五月の清々しい風が吹いてゆく。それはまるでとまった時を旅しているかのようだった――。




■ぐっはー!!またしても!
  またしても素敵カミュミロ話をゆみざき様から頂いてしまいましたvv
  んもう!本当にvvありがとうございますーvv
■前回のお花見話からそんなに経ってないのに!!
  嬉しい〜嬉しい〜vv
  てか、可愛い〜可愛い〜vv
  ゆみざき様の書かれるミロがもうもう常に可愛くって!!
  ミロ好きーの私は毎回悶えております(笑)
■素敵なお話をありがとうございました、ゆみざき様!!
  予想外に頂いた誕生日プレゼントってな感じで感慨ひとしおでございましたーvv