星は語る

 日本の沙織から聖域に荷物が届いた。七夕用の浴衣と小さなお菓子とそして笹と短冊。
 聖域に住む黄金聖闘士は七夕などには無縁だったが、沙織が織姫と彦星の逸話を手紙に添え、せっかくだから短冊に願い事でも書いたら、と言ってきた。
 アテナからのプレゼントであったし、こういう小さな楽しみごとは彼らも嫌いではなかったので二つ返事で笹を飾り、浴衣を羽織った。

 カミュは濃い紺の浴衣を早速身につけてミロを待った。しかしいつまで待ってもミロは現れない。初めての浴衣に手間取っているのかなと、カミュはミロの部屋に行ってみた。
「ミロ」
 トントンとノックして入ると、ミロはぼんやり椅子に座っている。何だか元気がない。それに浴衣の包みも開いてすらいない。
「どうした、ミロ?」
 ミロは黙っている。カミュはじれったがって、
「今更隠し事をする仲じゃないだろう」
 ミロは目を伏せて、
「この七夕の話は、年に一度しか会えない二人を物語っているんだろう…あまりに悲しくないか…?」
 カミュは話のそんな細部にまで拘っていなかったのでびっくりして、
「それは…ただの話じゃないか?それに年に一度しか会えないからこそ喜びもひとしおだと思うが」
 ミロも軽く頷いて、
「それはそうなんだが…」
 ミロは顔を上げて不安そうにカミュの目を見つめている。その端麗な姿にカミュははっとすると同時にミロが消えてしまいそうな大きな不安を覚えた。ミロはいつか自分達がこの二人のように星になって会うことしか出来なくなるのではないかと心配している…。
 カミュは暫し黙っていたが、やがてちょっと微笑んでミロの側に近づくと、
「バカだな」
「…?」
「七夕は特別な日なんだ。だからこそ楽しいんじゃないか?そして俺たちは毎日が七夕、つまり特別なんだよ。――お前に毎日会えるのが当然だと思っていたけど、それは凄く大きな奇跡なんだな」
「――カミュ」
 ミロの瞳に涙が浮かんだ。カミュは笑って、
「明日も明後日も会おうな」
 ミロは嬉しそうに俯きながらそれでもやっと微笑みを見せた。カミュはそれを見て安堵し、
「さ、浴衣着てみろよ」
 ミロは頷いて浴衣をふわりと身に纏った。その姿は目も覚めるような美しさで――沙織が何を間違えたのか、薄い青色に大輪の朝顔が咲いている、つまり女物の浴衣を送ってしまったのだが、浴衣が初めてのカミュとミロはそれを知るよしもなく――カミュはただただミロの姿に見とれていた。金髪を結いすらりと立つ艶やかな様子。まさに織姫なのだろう。

 その晩二人で笹に短冊をつるした。そこには「毎日会えますように」と書かれていた。

 夜空を仰ぐ二人。静かに星が瞬いている。この大きな偶然を星は語る――。





■ぐっはー!!またしても!
  またしても素敵カミュミロ話をゆみざき様から頂いてしまいましたvv
  浴衣ミローッ!!!!!!嬉しい〜嬉しい〜vv
  てか、も〜可愛い〜可愛い〜vv
  浴衣ですよ浴衣!!!!!それも女物!!!!!)
■素敵なお話をありがとうございました、ゆみざき様!!
  七夕までにUP出来てよかったです……。