「瞬……」 「何?紫龍」 呼び止めの声に、瞬はそう答えながら振り返る。 「……また、か?」 紫龍のその言葉に、一瞬何の事だか分からずに首を傾げた瞬は、だがすぐにその言葉の意味を理解して、苦笑しながら頷いた。 「そう。相変わらず懲りてないみたい」 「そうか。……一輝が知ったら、また、うるさいだろうな」 「そうだね」 紫龍のその言葉にそう同意して、それから瞬は歩きだす。 「……この調子でいくと、二十匹なんて簡単に越えるんじゃないかな。ペットショップが開けるよね、十分に」 「何だ、また拾ってきたのか?星矢は」 と。唐突にふってわいたその声に、二人は驚いて振り返る。 「びっくりした」 声の主はその言葉に軽い苦笑を浮かべる。 「どうりで、さっきから沙織さんの怒ってる声がしてる筈だ」 「言っておくけどね、氷河。君も人の事を言える立場じゃないんだからね?」 「そうか?」 その返事に、瞬と紫龍は軽い溜め息をつく。 自覚がないときたか、というのが正直な感想だ。 星矢ほどではないが、彼も十分拾ってきやすいタチなのだ。と、いうか、何故か捨てられた猫や犬が、氷河の後についてここ城戸邸まで来てしまうのだ。 相当、動物に好かれやすいらしい。 「で、今から瞬は犬の散歩か?」 「うん。たまにはここの外にも連れて行ってあげないとね」 瞬の手にした物を見ながらの紫龍の言葉に、瞬はそう答える。 「あ、そうだ。ねえ、二人共、兄さんを見なかった?」 「一輝か?」 「いや、俺は知らないけど」 「一輝なら確かさっき庭に出て行ったぞ?」 「本当?」 氷河の言葉に、瞬はそう念を押す。それに氷河が頷くと、瞬は慌てて走りだす。 「瞬?」 「ごめんね、二人共。兄さん待たせちゃうから、また後で」 後方からの声に瞬はそう答え、庭へと走って行くのだった。 残された二人は互いに顔を見合わせた。 「珍しく一輝が散歩に付き合うみたいだな」 「瞬に言われて断りきれなかったんじゃないのか?」 「だろうな」 氷河の言葉に、紫龍はそう頷いた。 「相変わらず、瞬には甘いな」 「全くだ」 二人はそう言いながら、とりあえずは、と星矢の部屋へと向かう。 おそらく、まだ沙織に説教をされているだろう星矢の助太刀をするために。 「ごめんなさい、兄さん。待たせちゃって」 瞬の言葉に、先に庭に出ていた一輝が振り返る。 「気にするな。それより、行くぞ」 一輝はそう言って、自分に向かってじゃれついてくる、その少し大型の犬の頭を撫でた。 「さっきから、はりきってるみたいで、始末におえん」 その言葉に瞬は笑いながら頷いて、手にしていた散歩用のそれを、首輪に繋ぐ。 「さ、散歩に行くよ、サクラ」 瞬のその言葉に、ワンワンと嬉しげな鳴き声が答えた。 そして彼らは連れ立って、城戸邸の外へと向かうのだった。 可哀想だからと犬猫を拾ってきたり。その散歩に行ったり。 例えば、こんな些細な日常の出来事。 言ってみれば平凡な日々の出来事。 そんな普通の日々が、今の彼らにとっては、かけがえのない幸せの日々。 穏やかな、日常。平和な、生活。 些細な出来事。平凡な日々。 けれどそれが、彼らの幸せ。 幸福の、理由───────。 04/11/07 UP |
■………ってな事で、ホンマに、普通のほのぼのしたお話です(笑) ええーと、これは、確か星矢のオンリーイベントに参加する時に書いたお話だった筈です。 本のタイトルが、まんまこの話のタイトルで。 最初に本のタイトルが決まっていて、そのタイトルでお話を書きたいとか思って。 それで書きあがったのが、このお話です。 本当はこのお話の前に、前振りの話もあるのですが……それが何故かストマン(もどき)で(笑) ………UPする勇気がありません。 でもそれじゃあ意味が通じないのか………??? ………スキャナつないだらコソッとUPしてみすかね。 小説に直すのも手なんですが、多分あおの話は絵の方が面白い、と思うので。 いや、描いてるの私なんで、下手っぴーなんですけども(爆) 一応お話としてはコソッリ星矢が猫を拾ってきて、んで沙織さんに見つかって怒られて……ってだけの話です。 ■もう、普通にね。ただ単に、彼らの日常を書きたかっただけです。 平凡な日々が、でもきっと凄い幸せなんだろうなって。 平凡な、でもかけがえのない生活、それが書きたくて書いたお話でした。 多分自分で書いた話の中では一番好き。 ………っても、私の書く普通のお話は大抵こんな感じばっかりなんですが(爆) |