Secret Summer

「幽助?」
「ん?どうした?」
 飛影の呼び声に幽助は『これでもかっ』という様な笑顔を浮かべて振り向いた。予想外のその笑顔に、思わず飛影は言葉に詰まってしまう。
「飛影?」
 突然黙り込んでしまった飛影に、幽助はそう不思議そうに声をかけた。
「どうしたんだ?何か用があったんだろう?」
「あ、ああ」
 幽助の声で漸く我に返った飛影は慌ててそう答えると、幽助の隣にチョコンと座り込む。
「飛影?」
「─────何をしているんだ?」
 テーブルの上に散乱しっきている教科書やノートを見やり、少し首を傾げて飛影はそう尋ねた。
 ─────くうっ。か、かわいいっ。
 飛影のその仕草に。幽助はそう思いながら、思わず手にしていたペンを力いっぱい握り締めた。
「ゆーすけ?」
「あ?ああ、悪い。何やってんのか、だっけ?」
 その声に、飛影はコクンと頷いた。
「───試験勉強ってやつ、だよ。解る?」
「………何だ、それは」
「んー、なんつうか……試験っていうのがあって、それの………そうだな、練習みたいなもんか。で、試験は試合、かな、うん」
 幽助はそう答えながら飛影を見る。
「解ったか?」
「…………」
「あーもうっ。別にたいしたイミねえんだから分からなくても構わねえよ。だから気にすんなって、なっ?」
 理解できないのが不満なのか口をつぐむ飛影に、幽助は宥めるようにそう言う。
「何故そんな事をしてるんだ?」
「………やっとかねえと煩いんだよ、周りが。本当はしたかねえんだけどさ」
「したくないならやめればいい」
「………だよなあ。よっしっ、決めた。今日はもうやめとく。………腹、減ってないか?」
「別に……」
「んー、どうすっかな……一人でメシ食うのもつまんねえしな」
 とは言っても、本来まだ夕食にするような時間でもないのだが。それでも珍しく頭を使ったせいだろうか、妙に腹が減っているのだ。
「まあ、いっか。少しぐらいなら耐えられっだろ」
「食べないのか?」
「ん?ああ、もう少ししてからな。あー、それにしても滅多に使わねえ頭使うと肩がこるぜ、ったく……」
 そう言いながら幽助は隣に座る飛影を抱き寄せた。
「………だからって何でこうなる」
「………いーじゃん、減るもんでもなし」
 どういう理屈なのかイマイチよく分からない事を口にしながら、幽助はさ更に飛影を抱き締めた。
「………暑苦しい」
「えー?そうか?……じゃあ冷房もう少し強めにすっか」
「幽助……」
 脱力しかけながら飛影はそう幽助の名を呼ぶ。
「オレは暑い、じゃなくて暑苦しいと言ったんだ」
「だから暑いんだろ?」
「────好きにしろ」
 解っていて言っているのだろう事に気が付いて。飛影は反論するのも馬鹿らしくなったのか、そう言って脱力する。と。
「じゃあお言葉に甘えて好きにします、って事で」
 そう言うと幽助は飛影の頬に軽く口づける。
「どうしてそうなるっ!」
「好きにしろって言ったじゃん」
「イミが違うっ」
 真っ赤になりながら飛影は幽助を押し返す。
「何で今更照れるんだ?」
「誰がっ」
「だったら別にいいだろ?」
 幽助の言葉に、飛影は溜め息をついた。
 一度言い出したら、どれだけ言っても効いた試しがないのだ、幽助は。言うだけ無駄だという事は、これまでの付き合いで嫌と言うほど理解はしていた。
 だから。
「幽助」
「何?」
「………腹が減った」
「……へ?ああ、腹減ったのな。オッケーオッケー任せなさい。今すぐ何か作ってやるから」
 飛影の言葉に幽助はそう返して台所へと向かうと、早速何やら作り始めた。
 ─────相変わらず、単純としか言いようがない奴だな……。
 わざと話を逸らした飛影は、幽助の反応に思わず胸中でそう呟く。
 けれど。
 そんな所も、気に入っているのだ本当は。
 以前の自分なら、きっとこんな事、考えはしなかっただろうけれど。
 今のこの生活を、気に入っている、なんて。
 それでも。それはそれで良いのかもしれない。
 鼻歌交じりで包丁を握っている幽助の後ろ姿を見ながら、飛影はそんな事を思うのだった。


                                       03/02/13 UP

■どこら辺がSecretなんでしょう。
  ってか何故この冬の最中に夏のお話UPなんでしょう私。
  選択間違ってませんかね、貴方。トホホ。
■ってか誰ですか貴方達。名前を語った偽者ですかい?
  ああそうですかい。その方が確かに納得いきますね(爆)
■このお話は、幽飛の友人のお誕生日祝いと称して発行した本
  『You Bring Me Joy』に載せた2本の小説の内の1本です。
  あまりにも昔すぎて、とりあえず資料がありません……。
  私の幽白での活動は、ほぼ彼女の引力によって進んでおりました。
  なので本命の筈の蔵飛よりも幽飛話のストックの方が多い事に、
  今回のサイト作りの過程で気が付きました(笑)
■でもまあ基本飛影好きーvvってだけの人間なので。
  ひーちゃん愛されてたらそれで満足vvらしいです(爆笑)