ロード番外超SS

シリーズ物ロードの思いつき小話。
ってか、ちょっとした会話に聞き耳たてた、みたいな。
第2章から登場の女性キャラを交えてみました、みたいな。



「こんにちは」
「あら、エルタナ。どうしたの?大荷物」
「うん。あのね、アレク、居る?」
「居るわよ。丁度今からお茶の時間なのよ、さあ貴女も入って」
「うん。お邪魔します」
 そんな会話を交わしながら家に入ってきた二人は、丁度部屋から出てきたアレクと出くわす形になる。
「あれ、エルタナ?どうしたんだい?」
「アレクに用事みたいよ?」
「オレに?」
「うん」
 頷いたエルタナに小首を傾げながらも、ナスターシャに促されるままにアレクは腰掛ける。その隣に、エルタナがちょこんと腰掛けた。
「アヴェロンは?」
「村長様の所に行ってるみたいよ」
 ナスターシャはそう言いながら、早速二人の前にカップを並べると紅茶を注ぐ。
「ふうん?」
「で、オレに用事って何?」
「あ、うん、あのね。あのね?」
「ん?」
「アレク、女の子の格好してたって、本当?」
「ッ!!!!!」
 予想外の言葉に、危うく紅茶を噴出しそうになるのを懸命に堪えはしたものの。とんでもない発言に、とっさに言葉が出てこない。
 そんなアレクの横顔を、邪気のない笑みでもって見つめながら、エルタナは答えを待っている。
「……………だ、誰がそんな事」
「ナスターシャ」
「って、ナスターシャ?!」
「あら、そんな話したかしら私、エルタナと」
「昨日」
「え?ああ、そうそう、そうだったわね。昨日、エルタナの髪の毛をまとめてあげてる時に、そう云えば」
「そう云えばって、ナスターシャ?!」
「ねえ、本当?」
 その言葉に。
 アレクはやっぱりとっさに返す言葉が見つからない。
「とっても可愛かったって、本当?」
 そんな風に聞かれて、どう答えれると云うのだろうか。
 返事に窮しているアレクに追い討ちをかけるように。
「可愛いかったわよ、それは勿論」
「ナスターシャ!」
「それで、それがどうかしたの?」
 アレクの悲鳴にも似た呼び声を、あっさりと無視して。ナスターシャはエルタナに向かってそう尋ねる。
「うん、あのね、これ見て」
 言いながら。
 エルタナがテーブルの上に広げたのは。
 色とりどりのリボンに、髪飾り。
「………………エルタナ?」
 恐々と名前を呼ぶと。
 一片の曇りも邪気もない、そうただ純粋に、目の前にお気に入りの玩具を並べられた子供の笑顔が、返ってくる。
「あたしが、くくってあげる」
 遠慮する!と返すよりも早く。
「あら、楽しそう」
 なーんて云う、これまた邪気のない声が横から入ってくるのだから、たまらない。
「でしょう?!」
「待っててちょうだいね。今、ブラシと手鏡、持ってくるわ」
「わーい」
「………………………」
 楽しそうな二人の声に。
 アレクは声もなく、一つだけ。ただただ大きな溜息を零す。
 願わくば。
 アヴェロンとラギシオが戻ってくる前に、彼女達が『お人形遊び』に見切りをつけてくれますように………。


 果たして、その願いが叶えられたかと云うと。



「何遊んでるんだ、3人で」
「………………遊んでるんじゃないよ」
「ああ、そうか。遊ばれてるんだな、お前が」
 しらっと言い切ったアヴェロンに。
 あとで覚えてろ。
 等と、アレクが胸中で唸った事からも察する事が出来ようかと……。





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