今までは…
ここ瀬戸内沿岸の地方は、あまりひどい天災に見まわれる事はめったになくて、『おかげさま』なこととよく思います。
それでも数年前に台風の土砂崩れで死者がでたとき、「今まではテレビの中の(ニュースの)シーンだとばかり思っていたけど、人ごとじゃないですね…」という声をあちこちで聞きました。
仏教のお話の中でよく紹介される江戸時代の狂歌をご紹介いたしましょう。
今までは 人のことだと 思うたが 俺(おれ)が死ぬとは
こいつたまらん
思わずふきだしてしまいそうな歌ですが、まことに重要で肝心なことを、短くわかりやすい言葉で伝えてくれています。
作者は、江戸時代の幕府の家来でもあった狂歌師の大田南畝(おおたなんぽ又は蜀山人(しょくさんじん))です。
『生老病死(しょうろうびょうし)』の苦しみは、他人事(たにんごと)で済まされるものではありません。
だからこそ今どうするか、ということに光をあてているのが仏教なのです。
台風にしても地震にしても、『ひとごとでない』のは同じことです。
自然が起こす数々の大災害は、苦しみ・悲しみを他人事とせず、どのくらい自分の苦しみ悲しみにできるかを問いかけているようでもあります。
(久昌通信111号より・一部改)