陰徳
(H13.9月)
米国の同時多発テロ事件は数千人もの犠牲者を出す結果となり、また、これをきっかけに戦争が起こるとすればさらに悲惨なことになりかねない、という気がします。
「宗教は怖いですなあ、和尚さん、どう思われますか」という質問を結構受けました。正直言いますと確かにそういう怖いと感じられる面があって答えにくいのですが、そのつど感じるままにお答えしております。
ともかくこれ以上悲惨なことにならないよう息を詰めて見守るばかりです。 ところで表題の『陰徳(いんとく)』はお寺でよく使われる言葉で、仏教用語といってもよいと思います。『陰徳を積め』という形で使われ『人の見えない(見ていない)ところでする良い事こそ、より素晴らしい』という意味合いです。
たとえばみんなが寝静まったあと、たった一人でお便所の掃除をするとか、他の人が来る前に、教室や事務所の机を拭いておく、ということです。みんなの目に見えるところで、これ見よがしにすることはどんなに素晴らしいことだろうが、みんなに見えないところで他人の役に立つこと(いわば縁の下の力持ち)には及ばない、という意味があると思います。
『陰徳』の言葉を思い出したのは、日本の総理大臣が、このたびのテロに対してアメリカが武力報復を計画している中で、何とか日本が目に見える形で協力しなければ、とあせっているように見えたからです。十数年前の湾岸戦争のときに、日本は金銭的な大きな貢献をしたにもかかわらず、諸外国から何も評価されなかったことが影響しているのでしょう。今回こそは、という感じで総理大臣を筆頭に皆があせりまくっているように見えます。
果たして政治家たちのそういう判断が正しいのかどうか、すぐ結論を出すわけにはゆかない気がしますが、目に見えない貢献こそが大切、『陰徳を積む』ことこそが素晴らしい、と仏教は教えてるんですよと紹介したいと思います。