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住職法話集

地獄と極楽の話

ある所に正直で信心深いお爺さんが居りました。そのお爺さんは、夢の中で地獄と極楽を見学しました。

こちら地獄と矢印の向いたほうへ行つてみると、大きな立派な部屋があります。その真中に丸いテーブルがあって、その上には素晴らしく美味しそうなご馳走が一杯です。そして、そのテーブルを囲んで座っている人たちは、長い長い箸を持っています。地獄もなかなか結構なところだな、とお爺さんは少しうらやましく思いました。

 でも、よく見ると、ご馳走のまわりの人達は皆、目ばかりが、ギラギラして、やせこけています。目の前にご馳走が山ほど有るのに変だなと思って、おじいさんは暫く様子を見る事にしました。すると、皆、目の前のご馳走を急いで取ろうとするのだけれど、お箸が長すぎてうまく取れません。たとえ取れたとしても、やっぱりお箸が長すぎて、どうしても口に入りません。しかも誰もが先を争ってご馳走を取ろうとするので、箸と箸とがぶっかってチャンバラの様になり、大喧嘩が始まってしまいました。

結局、一口だけでも食べられた人は誰もいませんでした。おじいさんは、皆がやせこけて目がぎらついているわけがわかりました。またまた騒ぎが始まってはかなわんとばかり、早々に地獄の部屋をあとにしました。

 地獄の部屋から出てきて、お爺さんが暫く歩いているとこんどはこちら極楽の矢印があります。そちらのほうに行ってみると、さっきの地獄と同じ様に、丸いテーブルの上に山のようなご馳走があり、周りに座っているみんなが長い箸を持っているのも同じです。ただこちらは、皆にこにこして、まるまると健康そうです。

見ると、こちらでは長い箸を使って、テーブルの向こう側の人に一口ずつ食べさせてあげています。食べさせてもらった人は「有り難う、美味しかった」とお礼を言って、今自分に食べさせてくれた向かいの人に食べさせてあげました。そうやってお互いに満腹になるまで食べさせ合っていたのでした。一組が終わるとその隣、というふうにして、皆が十分に食べて満足していたのです。

 同じ環境でも、心掛け次第で地獄にも極楽にもなるというお話でした。簡単でわかりやすいお話ですが、仏教の真髄を語るお話と言える気がします。