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住職法話集

甘露の法雨(かんろのほうう)

今年は5月15日(日曜日)が、旧暦4月8日でした。関西では旧暦4月8日にお祝いされることの多いお釈迦様のお誕生日、それが『花まつり』です。

 花まつりの事を灌仏会(かんぶつえ)・降誕会(ごうたんえ)と言ったりもしますが、ようするに、お釈迦様のお誕生(約2500年前)をお祝いする行事です。日本では7世紀頃から、農耕行事と結びついて広まったとされています。

 花まつりには、花御堂(はなみどう)を設けてその中に誕生仏(たんじょうぶつ)を安置し、その小さなお釈迦様に柄杓(ひしゃく)で甘茶(あまちゃ)を注ぎかけます。

 甘茶を注ぐのは、お釈迦様がお生まれになったのを大変に喜んだ(水の神の使いである)竜の王が、天から甘くて清らかな雨を降らせ、それで誕生したばかりのお釈迦様が産湯(うぶゆ)をつかった、という伝説に基づいています。誕生したばかりのお釈迦様に天から降り注いだ甘い清らかな雨のことを『甘露の法雨(ほうう)』といいます。

お釈迦様の教えは、われわれの口に甘く、心に潤いや安らぎを与えるものだということを意味しています。

 生まれたばかりのお釈迦様は、右手で天、左手で地をさし「天上天下(てんじょうてんげ)唯我独尊(ゆいがどくそん)」と言われました。『この広い世の中、長い歴史の中で、私は唯一のかけがえの無い尊いいのちをいただいた』という意味です。

誰でも生まれてくる人は(お釈迦様に限らず)尊いいのちをいただいているのです。男であろうが、女であろうが、貴族の家に生まれようが、奴隷の家に生まれようが、何の区別もありません。

『天上天下唯我独尊』は仏教の根本の教えです。当時のインドは、階級差別がとても激しい世の中でした。そんな中に出てきた教えが仏教です。その教えが広がってゆくには、我々が想像できないくらいの困難さがあったことでしょう。

そういった困難さを経て、今日の私たちに仏様の教えが伝えられました。私たちがお釈迦様の教えに出会うことができるということは、私たち自身に、甘露の法雨が降り注がれているということでもあります。そのことを忘れてはなりません。
(2005年5月)