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住職法話集

おせがきのこころ

「和尚さん、今日は祥月命日だからちょっとお墓に参って下さい」…ある人にそう頼まれて山裾(やますそ)にあるお墓を、拝みにゆきました。
「毎月、命日にここにお参りすると、あそこの草むらからタヌキが一匹顔をのぞかせて、墓参りが終わるのを待ってるんです。後でどうもお供え物を失敬していくようですよ。」苦笑いしながらその人はそういいました。

その狸を、巣で何匹かの子狸が待っているのかも知れないなあ、そんな事が私の頭の中をふとよぎりました。

その日は私が大きな声でお経をよむのでビックリしたのか、結局狸は姿を現わしませんでした。お経の最後には普回向(ふえこう)の言葉をいつもお唱えします。

願わくはこの功徳をもってあまねく一切に及しわれらと衆生とみなともに仏道を成ぜんことを…
この言葉を唱えるのに、この日はいつになく力がはいったのを覚えています……。

『おせがき』は漢字で書くと、『お施餓鬼』。餓鬼とは、簡単に言えば虫や鳥の霊、お葬式もしてもらっていないし、拝まれる事も無い霊のことです。

お経を読んだりする功徳を、何も垣根を設けることなく、「あまねく一切に及し…」と願う心は、本当に素晴らしいなあといつも思います。この心こそが『おせがきのこころ』そのものなのです。