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住職法話集

スパゲティー

 今から十数年前のこと。

1才だった2番目の娘がある時、お腹の病気になって、お医者さんから食べ物に制限を受けてしまった。それで、子供達の(私にとっても)大好物であるスパゲティーが、うちでは当分作って貰えないという、3才の長女にとっては、大変重大な事態が起こったのだ。

妹がお医者さんから止められてるんだからと言い聞かされて、あれほど好きなスパゲティーを姉はせがむことも無く、じっと我慢していた様だった。しかし2ヶ月経っても、まだ『スパゲティー解禁』とはならなかった。

 長女がよく辛抱しているのが分かったので、一度外へ出たついでに、食堂で食べさせてやろうという気になり、連れていった。店へ入ると、迷わずスパゲティーを注文し、それが目の前に運ばれてきた瞬間、娘は目を輝かせて大声で言った。

わぁーおいしそう、いっただっきまーす」…その声が店内に響き渡って、瞬時にお店の人や他のお客さんたちの笑顔を誘い、注目を集めることになった。私としては、恥ずかしかったが、じっと見ていることに決めた。

 それからは一口食べるごとに「おいしいね、おいしいね」を繰り返し、一人前を全部平らげてしまった。そして食べ終わると、またひときわ大きな声で、「あーおいしかった、ごちそうさまー」。その声がまた響き渡り、周りの人達は思わず大爆笑、店の人は「そう言って貰えておばちゃんもうれしいわー」と言ってくれた。

 このでき事は、子供が持っている不可思議な力を私に見せ付けた。この時以来、自分の子供だけでなく、子供全体に対するイメージが私の中で変化したように思う。

 教育問題の中で『今の子供たちに何を教えたらよいか』ということに、大人や先生たちが大いに頭を悩ましている。それはとても重要なことに違いないが、その前に子供をじっと観察する事が大切ではないか?それも、『目を光らせる』というのではなく、『見守る』という姿勢が肝心だ、と感じている。