天上大風(てんじょうおおかぜ?)
あと10日足らずでお正月。昔は指折り数えて待っていたお正月も、今はそう待ちわびることもなく(というよりむしろ恐怖をともなって)すぐにやってくるような気がしますね。
それはともかく、子供の時によく歌っていた「♪もういくつ寝るとお正月~」の歌(題名は何と云うのでしょう?)の中に
「お正月には凧(たこ)あげて~・・・」と歌われていますが、良寛さんの逸話の中に『たこ』が登場するお話がありますので紹介します。
この10月、私が住んでいるお寺から自動車で30分ほどの、倉敷(くらしき)で開催された『良寛』の展覧会に行ってきました。良寛さんのことはみんなもよく知っていると思いますが、今年は、良寛さんが生まれて250年だそうで、そのことを記念して開かれました。
良寛さんは今の新潟県の人で、生まれたのも亡くなったのも新潟県ですが、若い時に、禅の修行のために十数年を過ごしたのが、倉敷市にある『円通寺』という大きな禅寺です。そういうつながりがあって倉敷で展覧会が開かれたのです。
展覧会を見に行って、一番目を引いたのが「天上大風」と、良寛さんが紙に大きく書いた書です。太い文字ではありませんが 、まことにのびのびと、気持ちよく書かれています。そしてじっと眺めているといかにもビューっと強い風が吹いて来そうだな、と感じました。
良寛さんがこの言葉をお書きになったのには次のような出来事がありました。
良寛和尚が燕(つばめ・現在の新潟県燕市)の宿場を托鉢(たくはつ)された時のこと。
一枚の紙を持った子供が、和尚のそばにきて、
「良寛さま、おねがいだから、これに字を書いておくれ」と頼んだ。
そこで和尚が「何に使うのだ?」とたずねると、その子供は
「凧を作って遊ぶんだよ。だから、いい風が吹くように、『天上大風』と書いておくれ」と言う。和尚はすぐに『天上大風』の四字を大書して与えた。(『良寛和尚逸話選』より…禅文化研究所、平成10年発行)
大人が書を欲しがって頼んでも、良寛さんはなかなか書いては下さらなかったそうですが、子供好きだった良寛さんは子供が頼むと、すぐに書いてくれました。子供たちのごまかしのない無邪気さが、大変お好きだったようです。
それにしても『天上大風』と書いた紙でこしらえた凧は、天高く舞い上がったことでしょうね。そして、その子の夢や希望も、その子が大きくなったときに、高く舞い上がっただろうな、という気もします。
風が強ければ強いほど、凧はより高く上がります。それと同じように、人生も、つらいことが多ければ多いほど、より強く、よりたくましく生きて行けるように思います。