チベット旅行記(川口慧海著)のこと
川口慧海(かわぐちえかい)という人をご存知でしょうか?
もちろん故人です。宗派にとらわれることなく、仏教、つまりお釈迦様の教えに憧れ、出家修行をした人です。元妙心寺派管長・山田無文(やまだむもん)老師の先生であった人物としてもその名を知られています。明治時代に、当時鎖国状態であったチベットに修行に行ったことがとても有名です。もちろん歩いての旅です。彼が残した『チベット旅行記』という本の中に次のような一節がありました。
・・・(昼間は)乞食(托鉢のこと)をして、それで夜はいつもお説教です。そのお説教がなかなか同伴の人らの心を和らげる利き目がある。 もしそうでなければ、私はその人らのために危く殺される筈です。しかし今の間は殺される気遣いは滅多にない。なぜかと言うとこの辺には人も沢山ありますし、また人が居らないにしたところがこの辺は一体に霊地になって居って、いかなる猛悪の人間もこの霊地に一度入る者は強盗もやらなければ、また狩もしないという訳です。だから今の中は大丈夫ですけれども、その霊跡の地を離れたならばきっとやられるおそれがありますから、余程教育をうまくやっておかないといかんです。
というような点から私はつとめて説教をしました。それがまた大いに悦んで聞かれた。・・・・以下略。
川口慧海さんは文字どおり、命がけの仏教の話をしたんですね。