第4回 一切苦はプラス思考
『この世の一切は苦しみ』という真理は、人々を救い、積極的な人生へと導くものです。妙心寺派の布教師・松原哲明(まつばらてつみょう)師は『現在、死ぬほどの苦しみを味わっている人にとって、世の中は本来、楽しみでいっぱいなのだ、などといわれては、救われません。…中略…そうではなくて世の中は本来、苦しみでみち満ちているといわれたら、苦しむ者は、そうか、そうだったのかと救われるのです。』(洗心般若心経・チクマ秀版)と述べられています。『一切は苦しみ』という真理は悲観的なものでも消極的なものでもありません。むしろその逆です。
『人生は苦しみ』と思い定めている人の方が、例えば雑草のように強くたくましく生きてゆけるのではないでしょうか。基本的に『人生は喜び』と思っている人々には、何かの困難に出会った時すぐにポキリと折れてしまうような弱々しさを感じます。
一九九〇年にベトナムを訪れた元アイドル歌手のアグネス・チャンは、現地の人に質問しました。
「どうなんですか、生活は」と聞くと、「少し耐えやすくなってきた」という返事。「でもたいへんだったでしょう」というと、「いや、私たちはいつだってたいへんだったから」と現地の人はすました顔をしていたそうです(『みんな地球に生きる人part2』岩波ジュニア新書)。
その人々は、戦争下にあって困難なことがいろいろあったに違いありませんが、限りなくたくましくて、力強いですね。