第24回 一期一会(いちごいちえ)
この言葉は掛軸として茶室などでよく掛けられていますが、これは江戸時代末期の徳川幕府の大老であった井伊直弼(いいなおすけ)が著した「茶湯一会集」という茶道の本にある言葉です。
「一期(いちご)」とは人が生まれてから死ぬまでの一生のことで、「一会(いちえ)」とはただ一度の出会いのことです。
井伊直弼はお茶会の心得として次のようにいっています。
「そもそも茶湯の交会は、一期一会といいて、たとえば幾度おなじ主客と交会するとも、今日の会に再びかえらざる事を思えば、実にわれ一世一度の会なり。さるにより、主人は万事に心を配り、いささかも粗末なきよう深切実意を尽くし、客にもこの会にまた逢いがたき事を弁え、亭主の趣向、何ひとつおろそかならぬを感心し、実意をもって交わるべきなり。これを一期一会という」
ある日の茶会は、たとえ同じ茶室、同じ顔ぶれであったとしても、以前の茶会とは決して同じものではありません。仏教の真理といえる『諸行無常』そのままです。すなわち、いっときとして同じ状態のものはないし、一切のものは常に変化しているのです。
その日の茶会は一生に一度の出会いであると心得て、万事に心を配り、誠意をもって最善を尽くす事が肝心です。井伊直弼がその書の中で説いているのはそのことなのです。
このことは、茶会の心得というだけでなく、わたしたちが接する人との出会いの心得としても大切なことです。今、この時、この場での出会いを大切にして、心をこめて人と触れ合いたいものです。
(妙心寺HPより 一部改)