第32回 消災咒(しょうさいしゅ)
消災咒(しょうさいしゅ)
『消災咒』は読んで字のごとく『わざわいを消すおまじない(お経)』で般若心経(はんにゃしんぎょう)と一緒によくよまれるお経です。本山妙心寺のお経の本の中に 般若心経のすぐ後に載っています。
「ナムサマンダー」ではじまるこのお経は、漢字でも70字ほどのほんの短いもので、3回もしくは7回繰り返しておとなえします。全部がサンスクリット(梵語)で意味は全然分かりませんが、説明しますと、虚空・炎・星に対して「災(わざわ)いを消してください」と願うのがその大意です。一部をご紹介します。
ナムサマンダーモトナンオハラーチーコトシャーソノナントージートーエンギャーギャーギャー・・・・・
事故や火事などを起こさない心がけを肝に銘じながらお唱えすることがとても重要です。私が、修行道場にいた頃、お師匠様からある檀信徒の家にお経をあげに行こうとした時、「あの家は息子が交通事故でなくなっとるから、特にねんごろに『消災咒』をよみなさい」と言われたのを思い出します。
現代は、たとえば、もし火災が発生しても、消防のかたがたの尽力で、火災を消し止めることも可能な時代です。しかし昔はそうは行きませんでした。火災などが起きてしまってはどうにもなりませんから、災いが起こらないことを神仏に祈ることは、今とは比べ物にならないほど重要であったに違いありません。
もし事故や火事を起しても、後ではどうにかなる現代ではあっても、事故や火災が全然起こらないかと言えばそうは行きません。高層ビルなどが建ち並ぶ大都会で、いったん地震でも起きればどんなことになるのか皆目(かいもく)見当がつかないほどの現代です。さまざまな意味での危険性は、昔に比べるとかえって大きくなっているかもしれません。その意味では、事故や火災に対する個人個人の心掛けの重要性もいっそう増しています。『消災咒』の役割も一層大切になってくるのではないでしょうか。