久昌通信142号おもて
塔婆供養(とうばくよう)
12月1日、恒例の開山忌、おひたきの供養の行事が無事終了いたしました。
関係の方々には大変お世話になりました。どうも有難うございました。
行事が終わってから、月報の新聞を作らなくてはならないのを思い出して、あわてて文章を書いています。
行事のおりに、法話を聞かせてくださった津山の宗永寺(そうえいじ)さんのお話の一部も思い出しました。たからくじはどう書くか?『多空くじ』だそうです。皆さん、よく覚えておきましょう。
天候もなんとかもってくれて、雨が少し降ったのは開山忌の行事が終わってから。
ほっと安心したからかどうか、急に思い出した、というわけです。
さてこの行事(法要)の中で塔婆供養も行われました。
ご存じでない方のために少し説明すると、塔婆供養とは、50㎝足らずの短い塔婆に、◎為〇〇家先祖代々頓証菩提 または◎為〇〇〇〇大姉(お戒名)頓証菩提 と書いて(前後の文字は印刷)、それを香をくゆらした中で読み上げ、お経やご詠歌を唱えて供養するものです。
その塔婆が今回は二百数十枚ありました。
それらを行事の中の決められた時間で全部読み上げるのはなかなか神経を使いますし、参詣して見ている方も、自分が申し込んだお塔婆はちゃんと読まれるだろうか、順番はまだかなあとか、長いなあ早く終わらないかなあ、とか様々なことをお考えになることと思います。
しかしながら、私正直に申し上げますと、行事当の塔婆供養に対して使われるエネルギーは…まあ、三割ぐらいかなあ、と数年前から感じています。
行事当日の十日ほど前から、ぼつぼつと塔婆をかきはじめ、数日前に書き終え(年によっては三百枚ほどの時もありました)、間違いがないか、もう一度点検します(それでも間違いはあるんですけどね)。
その、書いたり点検したりする時の方が、本番の行事の時よりよほど多くのエネルギーを使います。
さらに言うならば、本番当日は、行事の手順を間違えないようにするのが精いっぱいで、お塔婆を読み上げても、その故人を偲んだりする余裕はとてもありませんが、〇〇家先祖代々と書いているときは、その家のことを思ったり、戒名を書けば、その故人の顔を思い浮かべ、人柄をしのび、ご冥福を祈ることができます。つまり感覚としては、塔婆を書き、点検をした時点で、塔婆供養の七~八割は終わっているという気がするのです。
塔婆供養に限らず、よく考えてみると目にみえているものなんて、見えてないものの何分の一にしかすぎません。
氷山の一角などという表現をよくつかいますが、氷山は九割以上が海水の中です(地球温暖化で溶けていて白クマは大変だそうですが…)。
またこんな言葉もあります。
「菊づくり 菊見るときは 陰の人」
奇麗に立派に咲いた花のかげには、丹精こめた、苦労した人がいることを忘れてはなりません。
3本足から2本足へ
久昌寺に(餌を食べるために)出入りしていた野良犬がいることを以前ご紹介しました。
彼女(メス・雑種)の人生(ではなくて犬生?)がとても波乱万丈、再びご紹介します。
この犬が久昌寺に出入りし始めて2年少し、最初は元気な4本足の犬で、3匹ほどの集団でお寺の裏の竹やぶあたりに姿を現わしていました。
ところが1昨年12月、エルメス(そのノラを私たちはそう呼んでいます)は左の前足に何重かの針金を巻きつけたまま、3本足でヨタヨタしながら姿を現しました。
近所にイノシシが出没するというので誰かがわなを仕掛け、それに引っかかって、針金をひきちぎって何とかのがれたらしいのです。
針金をはずしてあげようにも、捕まえることもできず、そのままになってしまいました。
針金をはずすことはできませんでした。でもエルメスの、針金より先の足は腐ってなくて、足を地面につけて踏みしめることは出来ませんが、くびれた先の足にもちゃんと毛が生えています。
死ぬことはない、大丈夫と判断しましたが、もちろん左前脚は地面に下ろすこともできず、3本足の野良犬になってしまいました。
それでもエルメスは、元気な3本足の野良犬でした。以前のような素早さはありませんが、頻繁にお寺にやってきて餌を食べていました。
それどころか、3本足になって1年を過ぎた今年3月のお彼岸に、足に巻きついていた針金がはずれたのです。
くびれた脚はそのままで、3本足は変わりませんがとても身軽になったらしく、まるで普通の四足のように、素早く走り回っていました。
そんな様子を見てうちの家族も大変喜んで安心したのですが、更なる困難が彼女を待っていました。
この10月頃、エルメスは出産しました。
すぐ前まで大きなおなかを抱えて餌を食べに来ていたのが(おなかの子の父親はうちの飼い犬・ゴローではありません、彼女にふられました)、気がつくと、おなかがペシャンコの姿で現れました。
それからはほぼ毎日餌を食べにやってきました。
生まれた子犬に乳をやるためにも、栄養豊富なドッグフードがたくさん必要なのでしょう。
ところが11月上旬、ぷっつりと姿を現さなくなりました。
しばらく経って姿を見せたと思ったら、不自由な側の後ろ足までが使えなくなって二本足の犬になってしまっているのです。
いったい何があったのでしょう!
がりがりにやせている以外、遠目には以前と変わらないように見えるのですが、後ろ足はまったく使わず、片側の前足と後ろ足の二本だけでトボトボ歩いています。
どうにか動けるようになったので、確実に餌があるお寺まで来たのでしょう。
餌を食べるとき、最初はへたって腰を下していましたが、悪い後ろ足を下におろし、立って食べられるようになりました。
でも、歩くのはやはり2本足です。バランスを取りながら、体を傾けてですが、だいぶ早く動けるようになりました(人間にはつかまらないように、と心得ているようです)。
子育てにも頑張っています。
うちでたくさん食べて、ねぐらへ帰って吐き戻して、それを子犬たちに食べさせているようです。
食べる量がすごいのに、がりがりのままなのでそうではないかと想像しています。
生後間もない赤ちゃんをほったらかしにして二人で遊びまわていた揚句に、赤ちゃんを死なせてしまった人間の若夫婦に、エルメスの姿を見せてやりたい気持ちです。