お礼SS第2弾 nontitle  (若反)



  飲み過ぎ

 そう言ってグラスを取り上げると、

  まだ残ってるのに

 そう言って僅かにフラついた視線がグラスを追い掛けてくる。あえてそれを無視し、テーブルの端にグラスを置いた。

  残ってるのに

 再び呟かれた言葉に見ると、上目使いの視線にかちあう。
 普段ない様子に零れ落ちそうになる笑みを噛み殺し、その視線を受け止めた。

  珍しいな

 そう言うと不満そうに僅かに頬を膨らませ。

  なにがぁ?

 組んだ腕の中に顔を埋めたまま、返ってくる言葉に益々笑みを誘われる。
 そっと手を伸ばし、さらさらと音を零しそうな前髪を梳くと、気持ち良さそうにその瞳が閉じられた。

  今日は大人しくもう寝ろ

  なんでぇ?

 即座に返ってきた声にこれ以上は堂々巡り、と判断し。いまだテーブルに懐いている身体を抱き上げた。
 慌てて自らバランスを整えたかと思うと、ふわりとした笑みとともにその腕が首に巻き付けられる。
 クスクスと零れ落ちる笑みに、つられて笑みが零れた。

  この酔っ払い

 目の前でふわふわ揺れるその髪に小さく口付けながら零すと、酔ってなんかないってばと、拗ねたような答え。
 はいはい、と返すと、プクゥとその頬が膨らんだ。けれどそれも一瞬で、すぐにクスクスと機嫌良さそうな声が零れ落ちる。
 ベッドにそっとその身体を横たえ。整えながら、お休みと呟けば。

  ケチ

 と脈絡のない拗ねた声音の言葉。
 その言葉に思わず笑みが零れる。見上げてくる瞳。
 その隣に寝転び毛布ごと抱き寄せると、くぐもった小さな笑い声。モゾモゾと腕の中で居心地の良い姿勢を求めて動く温もりは、やがて胸元に頬を押し付けるようにして落ち着いた。
 お休み、と。悪戯っ子のような瞳とともに、小さく告げる声。

  お休み、酔っ払い

 その頬に口付けながら、そう返す。
 擦り寄ってくる身体を、望むままに腕の中に閉じ込める。


 とんでもなく酒には強い、恋人が。酔うなんて事が、それも普段の半分以下の酒量であるハズがないのは百も承知だけれど。
 わざと甘えたその仕草は普段お目に掛かれるモノではない、から。そして自分以外に見せられる者がいないのも歴然とした事実だから。
 求められるままに、彼の要望に従うまでだ。


 たまにはこんな夜も悪くない、と。
 夢の入口に辿り着く頃だろうその頬に、そっと口付けながら。

  お休み、いい夢を

 そっと囁き。
 愛しい温もりを感じながら、目を閉じた。




  第2弾は、安直に第1弾SSのわかしー視点からのお話でした。
  いや、第1弾SSの一樹ちゃん曰くのバレてるんだろうーなぁ、が一体何なのか、が。
  はっきり言って読んで下さってる方には解んないんじゃねぇの、アレじゃ?と。
  はい、己の力量不足を補わんが為のSSになってしまいました(爆)